歯医者と本
歳とともに衰える身体だが、歯の嵌合が少し合わない。妙子さんの高校の同窓会
報の川柳では無いが、話が合わない(若者と)入れ歯が合わないとなる。
1ヶ月半前に予約した何時もの歯医者に感染の恐れがあるが行ってきた。時間予
約をするも大体20~50分程待たされる。この待ち時間は本棚にある本の読書。
だが、今日はウィルス蔓延?!で客が少ない。本を開けたと思ったら呼ばれた。
するとその本を持って治療室に来て下さい、差し上げ上げますという。疎遠であ
りたい、親しくなりたくない医院だが、何時も親しく歯科医と会話。暫し治療椅
子上で開本。歯の不具合状態を説明、新しい入れ歯を作り直しましょうという。
医院経営に貢献して下さい?!ではないが、8割は保険負担であるも自己負担よ
り保険の医療費が気にもなる。現在の噛み合わせの不具合を調整後、歯型を取る。
来週も来て下さい、で来週の時間予約をし去る。コンビニでおにぎりを買い、次
なる野洲のテニスコートに向かった。その持って帰った本の内容である。
目に留まった記事、「マルクス「資本論」が人類を救う」。だが、難しい資本論
を読んだことは一度も無い。内容は大阪市立大、斉藤幸平准教授とジャーナリス
トの池上彰氏の二人の対談。斉藤准教授は『人新世の「資本論」』を出版。
20万部を超えるベストセラーという。その話題本の内容についてである。
今となっては矛盾多い資本主義のあり方を問うている。戦後30年余は資本主義
は好調に機能し、先進国では経済成長で国民全体の生活水準を上げ、中間層も順
調に拡大。しかし今、貧富の差の拡大、使い切れない膨大な富を持つ富裕層、一
方、食事に事欠く貧困層も増大、地球環境への負荷は限界、資本主義の限界、危
機が来ていると。多くの人が困窮している時に実態から乖離した日経平均株価が
3万円を突破、資本主義の矛盾、歪みが現れている。問題は資本主義に代わる
世界を描けない、選択肢がない閉塞感。この時に資本主義に代わる世界を思い描
くためにヒントを与えてくれる思想家がマルクス。最晩年のマルクス思想、新し
いマルクス研究が進み、現代に多くの示差を与えくれると。
SDGs(持続可能な開発目標)、プラスチックによる海洋汚染、CO2による
気候変動、富裕層にみる経済格差等。「資本主義が経済成長を優先する限りは何
も解決出来ない」とスエーデンの10代の環境活動家グレタは世界に訴え、衝撃
を与えた。土壌汚染、森林伐採、野生動物の闇取引、生物多様性の喪失など自然
に手を加えすぎている。高学歴のエリートが周りが羨むような仕事をしているよ
うに見えても自分の仕事など何の役にもたっていないのではないか、と意欲を失
っている。高い給料をもらっているから続けているが、本来、労働者は自分の労
働の主人公でなければならないが「労働の商品化」によって生じる「労働の疎外」
が支配層の一部でも起きている。
今回のコロナが露わにした「使用価値」。私たちの生活にとって「何がエッセン
シャル・ワーク」で「何がブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)」かを。
資本主義の効率の悪さを明らかにしている。コロナ禍においては「交換価値」で
いうと極めて”安い”マスクが ”高い”「使用価値」を持つようになり皆がマスクを
求めた。使用価値を生む仕事こそエッセンシャル・ワーク。だが、エッセンシャ
ル・ワークを低賃金、長時間労働で”周辺化”するのが資本主義。生活維持に必要
な水、土壌、自然も周辺化、必要不可欠なのに「商品=資本主義」の世界では
”周辺化”され、正しく評価もされないものがある。つまり「交換価値」に振り回
される愚かさ、コロナ危機は「使用価値」を大切にする社会に戻るチャンスでも
ある。暴力革命で体制をひっくり返すというのが従来のマルクスのイメージだっ
たが、マルクス自身は「恐慌というのは陣痛なんだ」「ポスト資本主義は資本主
義の胎内にある」と言っている。つまり、コミュニズムの萌芽は、今この社会に
も存在しているが、”周辺化(商品化)”されて我々が気付いていないだけ。私た
ちは、子供の面倒をみたり、困っている友人を助けるのに、対価は求めません。
「各人は能力に応じて与え、各人は必要に応じて受け取る」というコミュニズム
の原理がある。こうした領域を今より、みんなでもう少し広げて貨幣や商品では
やり取りされない「コモン」の種を見付けて育てて欲しいものという。 処で、
一寸逸れて小生はベーシックインカムという社会制度に注目。必要最低限の生活
が出来る所得保障があるなかなか面白い制度。個々の価値観に基づき人生設計の
選択肢も広がる。小生の今の年齢では導入を期待しても仕方ない事だが・・・。